俺が彼女を抱けない理由
ピンポーン

葵の押したインターホンの音に中から玄関に向かって走ってくる音が聞こえた。





「葵〜!!」


沙希の声に俺も後ろから顔を出す。

びっくりしたような顔をしながらも納得したように俺達を招き入れる。







「ここ来るの相当迷ったし」


「そうそう拓ちゃん途中キレてた。笑」


「俺地図渡しただろ?」

奥の方から兄貴の声が聞こえる。


この地図。。。ですか?

沙希に見せてやろうと思ったけど兄貴の為を思ってやめておいた。


「沙希なんか手伝うことある?」


葵が沙希とキッチンに行く。


「高井さんと楓さんがほとんど準備してくれてもう。。食べるだけ。笑」

沙希ちゃん相変わらずだね。。。。


「沙希冷蔵庫からビールだして〜」


兄貴の言葉に沙希が嬉しそうに動く。


コイツのこんな幸せそうな顔見たことなかった。


そんな沙希を何秒か見ていると俺を見る葵の視線に気づく。


「それにしても俺らまで呼んでもらってよかった訳?」


俺は慌てて兄貴の方へと顔を向けた。


別に沙希の事をまだ好きとかそういうのじゃない。


でも葵の事を考えたらそういう些細なことでも気にするだろうなって思ったんだ。


「いいからいいから。それにしても結衣ちゃん遅くない?」


兄貴の言葉に沙希と葵が顔を合わせる。


その瞬間空気が変わったのが分かった。


結衣?



ってあの結衣ちゃんだよな。。。


< 199 / 281 >

この作品をシェア

pagetop