俺が彼女を抱けない理由
止みそうもない雨の中、疲れ切った体ではなかなかうちまでたどり着かない。



ゆっくり時間をかけてやっと家が見える所まで来た。


電気がついてるからお母さんいるかな?


なんか食べるもの作ってもらおう。


久しぶりの家だしさすがに優しくしてくれるだろう。




そんな期待をしながら家の前に着く。


いつもの場所にはまたあの車が停まっていて自分の家なのに入るのが恐い。



重い荷物と体を引きづりながら玄関のドアを開けるとテレビの音だけが聞こえた。


いないのか?





俺はゆっくりとリビングのドアを開けた。



えっ。。






そこには知らない男と母親が裸で抱き合ってる姿があった。



その場から逃げ出したいのに足が動かない。


俺に気付いた男と目が合う。


「あれ?息子じゃない?」


その声に母親がこっちを向いた。


「あれ、拓、帰り明日じゃなかった?」



別に慌てるでもなく普通の声のトーンで話す母親は男と体を離す事もしない。



何?



よくこの状況が分からない。

俺は2人に何を言うでもなくその場から逃げた。





頭の中が真っ白になってどこに向かってるのかもわからない。



結局またあの小さな公園にいた。



頭からさっきの光景が離れない。


ウッ



激しくなる雨の中吐き気と震える体をおさえた。


あんな奴母親じゃない。


< 37 / 281 >

この作品をシェア

pagetop