俺が彼女を抱けない理由
1年の終わりに俺は腹違いの兄貴に高校の廊下で声をかけられた。
親父から俺の事は聞いていたらしく、何のためらいもなく話かけてきた兄貴は俺とは全然違うやわらかい感じの人だった。
卒業したら舞台役者になりたい事。
兄貴の母親も親父に愛想をつかして出て行った事。
親父が俺に会いたがってる事。
兄貴が卒業するまで何回か学校で話した。
そして今日の駅伝も親父と兄貴は応援に来るといっていた。
見てくれたかな。。
「じゃあ拓〜先帰ってるから俺んち集合な」
「わかった。ありがとな」
「おう」
荷物をまとめて先生の所へ向かう。
「みんな頑張ったな。お疲れ。じゃあ学校戻るぞ」
車に乗り込もうとした時、俺は男の人に呼び止められた。
「結城拓くん?」
「はい」
「分かるかな?」
俺は親父似なんだな。。
その人の顔をジッと見る。
「分かります」
「いい走りだったよ。おめでとう」
「ありがとうございます」
「お母さんは元気か?」
「・・・・」
「病気でもしたのか?」
「いや。。そういう訳じゃ。。」
さすがに男と出て行ったなんて言えない。
「まだ先の話だけど、卒業したらうちで働かないか?」
「えっ?」
「まぁまた考えていてくれたらいいから」
そういって親父だと言う人は帰っていった。