俺が彼女を抱けない理由


俺たちは三浦に別れを告げて三浦の家を後にした。

三浦のお母さんから言われた「結城くんはあの子の憧れだったから」っていう言葉が頭から離れない。



俺。。アイツに何してやれた?


陸上も中途半端に辞めて、三浦からの唯一の恋の相談もそのままで。。


憧れって何だよ。。



俺のどこに憧れるって言うんだよ。。





「拓。。。大丈夫?」




「あぁ」





香川に腕を持たれて俺達は久しぶりにみんなで高校に行った。



「懐かしい」





「拓?元気だった?」



「あぁ」



こうやって香川と話すのも3年ぶりだった。




「拓が抜けてからの駅伝。。。三浦っちかっこよかったんだよ。。」




「そっか。。見たかったな。。。。アイツの走ってるとこ」



「拓は今何してるの?」

「親父の会社で働いてるよ」



「そうなんだ。。。。」


「大学どう?」


小さな声で話してるのに静かなグランドに声が響く。


「がんばってるよ」


「そっか。。」



秋の夜風が冷たい。





「なんか冷えてきたな。。帰ろっか」




「・・うん」



香川の目からこぼれる涙を拭ってやる事しかできない。





俺は沙希を初めて抱きしめた。。。



この時俺の中で本当に沙希が大切だって分かったんだ。




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