バーチャルウォーズ
ところが、ゲームにログインしてみても流輝はいなかった。
ギルドのメンバーに聞いてみても、多忙なのではないか?と返事が来るだけだった。
「いくら流輝さんが言ってたとおりだったって言っても、ふ~んで終わっちゃう話だよね。
男の人が他の男の人の話をきいても面白くないだろうし・・・。」
雪美はパソコンの電源を落としてすぐに眠ってしまった。
それから10日ほどたったある日・・・。
雪美にとって耳を疑うような出来事が起こった。
華道部の先輩たちに連れられて、ある洋菓子店でケーキを食べていると、30才前後の男の客が店の若いパティシエと会話しているのが聞こえた。
「ゲームで友人紹介したら特典あるんだったな。
おまえのキャラってなんて名前だっけか?」
「ゲームはグリーンアライブって言ってキャラは流れるに輝くって書いて流輝だよ。」
(えっ!?グリーンアライブで流輝さんって・・・!聞こえた。
うそっ・・・。この店にいるの?)
さすがに先輩たちと食べているさなかに、オンラインゲームの知り合いを捜すというのは失礼だと思った雪美は日を改めて、店に来ようと思った。
と、思っていると・・・先輩の彼氏らしい人から電話がかかってきて、先輩は次々に帰ってしまったのだった。
これは願ってもないチャンスだと思った雪美は、カウンター席へと移動して新たにケーキを注文した。
すると、さっき友人にゲームのキャラ名を言ったパティシエがちょうど雪美の前に立ってお茶をすすめてくれた。
「お茶、いかがですか?おかわりしてくださったんですね。」
「あ、あの、流輝さんですよね・・・。グリーンアライブの。」
「えっ?そういう君は・・・もしかして、同じギルドの人かな?
さっき、友達に紹介した話が聞こえちゃった?」
「はい、それで気になって、思い切って声をかけちゃったんですけど・・・すみません。」
「へぇ~で・・・誰かな?なんかリアルで会っちゃうって変な感じだね。」
「スノウです。私がスノウを動かしてます。」
「おおぉ!君がスノウさん?マジで?いやぁ・・・なんか照れるなぁ。
かわいい人じゃないかと思ってたけど、ほんとに女子高生かぁ。
流輝です・・・。あ~~でも・・・お互い本名ではまだ自己紹介はしないでおこうかな。
本名とごっちゃでない方が、バーチャルは楽しそうだし。
どうかな?」
「そうですね。パティシエさんだってわかっちゃっただけでもすごいことだと思うし、本名はもっと先のお楽しみの方が確かにゲーム内で遊びやすいですね。」
「うんうん。ここんとこ、仕事が忙しくってね、あまりインできていないんだ。
今夜はたぶん、少し遊べると思うんで、手伝ってもらってもいいかな?」
「はい、もちろんOKですよ。
でも、世間は狭いのかびっくりしちゃいました。
バーチャルで遊んでた人がこんな近くにいらっしゃったとは・・・。」
「僕もです。よかったら、リアルのこの店の方にもお友達と来てくださいね。」
雪美はこのイケメンパティシエの前でどきどきしながら笑顔で「はい」と答えた。