バーチャルウォーズ
お祭りの話題で大騒ぎだったが、部屋にもどった咲はふと雪美が流輝にいろいろ話したい話題ではないかと思った。
(兄貴がログインしてるだろうしなぁ。・・・このあいだ、流輝は彼女がいるということになってるから余計に男女の話題なんか話しやすいだろうし。
って・・・なんで俺そんなこと気にしてるんだ?
ええ~い・・・勉強のじゃまだ!)
雪美はお風呂を済ませてしばらくリビングで休んでいると輝人が着替えを持ってやってきた。
「なぁ、あとで話があるから声かけるからな。」
「話って何?」
「うん、お祭りのこととか他にもちょっとな。」
「わかった。部屋にいるからそのときにノックして。」
「おお、風呂いってくるわ。」
浅岡家の個人部屋は1階に雪美の父の書斎と応接室、そして輝人の部屋。
2階のいちばん奥が咲の部屋、その隣が客間でその隣が浅岡夫婦の寝室、いちばん階段に近いところが雪美の部屋となっている。
輝人は風呂から上がって早々に雪美の部屋をノックした。
「は~い。あ、リビングに・・・」
「いや、ここで話したいから部屋に入れてくれないか。
ドアは少し開けていてくれていいから。」
そういわれて雪美は輝人に勉強机の椅子を出し、自分はベッドに座った。
「あのさ・・・教師と生徒って形で再会しちゃったから、なかなかプライベートな話なんてできなかっただろ。」
「うん。輝クンけっこう帰るの遅いしね。休日もクラブみてるし・・・忙しそうだね。」
「まぁ、若手だからそこんとこは仕方がないけど。
おまえはまだ小さかったから、俺と遊んだ記憶だってあんまりないみたいだし、先生の俺の方が普通の記憶になるのかもしれないんだけどさ。
俺はちっちゃいおまえのことはよくおぼえてる。
すげぇかわいい女の子だからいつも家に入り浸ってて、母ちゃんに怒られた。」
「輝クンのご両親は今どうしてるの?同じところに住み続けてるんだっけ?」
「いや、母親は死んだ。親父は韓国で技術職に就いてて、日本人だけど再婚したらしい。」
「らしい・・・って。そんなことママに言ってなかった。」
「ああ。いきなり結衣子おばさんに言ったら母さんがもうこの世にいないことでショックを受けると思っておじさんに話しておいた。」
「そうだったんだ・・・。」
「もう、俺は社会人だから自分のことは自分で決めるし生きていける。
で・・・おまえがあのときのちっちゃい雪美だと知ったとき、それまでのつまらない日常がパァっと明るくなってな。」
「そんなにつまらなかったの?」
「おまえの嫌ってた見た目とかつまらない噂に振り回される学校の方が多いだろ。
そういうところで俺みたいな駆け出しは先輩に言われるままに仕事をこなすだけだったしな。
でも、大賀山高は規則がきびしいってきいていたけど、なかなかいい学校で偏見が少ないし、先生への指導も徹底している。
そして・・・おまえがそばにいる。」
「えっ・・・。」
「かわいい雪美がとてもきれいになって俺の前に現れたときには驚いた。
道を尋ねた赤い髪のコが印象的で・・・やっぱり雪美だと気がついたときには追いかけてきていた。
あのな・・・本当はもっと後で・・・雪美が3年になる頃に言おうかと思ってたんだけど、どうやらそれだと俺は転勤になっているだろうし、ライバルも多くなりそうだから、もう言っておく。
俺、おまえを嫁さんにしたいから。
現時点ですっごい早いのはわかってるけど、考えていてほしいんだ。
夏祭りの案を職員会議で押したのも、おまえをみんな公認のもとで独占したかったから。
大人げないのはわかってるけど、そうしたかったから。
ロリコンとか変態とか言われても俺は気にしない。」
「ぷっ・・・そう言われるんだ。」