バーチャルウォーズ
竹井真菜の説明はこうだ。
全校生徒と先生全員に『あなたがデートしてみたい異性の生徒は?』
同じく『あなたがデートしてみたい異性の先生は?』というアンケートをとる。
上位10名程度で人気のある人を固定する。
夏祭りの日の朝、登校した人からノミネートされた10名前後の人の名前を記入するか、お目当てがいない場合は白紙もしくは『なし』
そして、自分の学年、組、名前を書いて箱に入れる。
その後役員がノミネートされた人ごとに用紙を分ける。
最後に、コーナーが始まったときにノミネートされている人自身でくじをひくように名前が書かれた紙をひいて、デートする相手が決定する。
やむおえない事情で記入した人がその場にいないときには、いちばん下に用紙がある人とする。
「もう一度引いてもらうんじゃないの?」
「くじ引き大会じゃないのよ!
やむおえない場合って後でわかることでしょ。
他の決まったペアはとっくにデートしてるってことよ。
またくじの準備するのは面倒だし、もしも用紙が2枚しかなかったらすぐに誰かわかってる状態じゃないの。
ないって場合もあるわ。
変に期待させずに、用紙がないってすぐにわかった方が終わったなって思うでしょう。」
「すばらしいね。とてもわかりやすい説明だった。
たしかに、君の言うとおりだ。
そこまで話が煮詰まっているとは思ってなかったよ。
ありがとう。」
咲が竹井真菜にそう礼を述べると、真菜は顔を真っ赤にして笑顔になった。
「咲様・・・いえ、菅野先輩にそうおっしゃっていただけると、私も企画したかいがありましたわ。
とてもうれしいです。」
咲の発言もあってか、あっという間に夏祭りデートの話はまとまり、他のアトラクションまで話をまとめることができた。
会議が終わって雪美は松永と中井といっしょに正門を出て、チラと後ろをふりかえると、咲にべったり竹井真菜がくっついてしゃべっていた。
「小悪魔っていうか台風だな・・・。竹井妹は・・・。」
「でもいいプレゼンだったじゃないか。咲もほめてたしな。
けど、その結果がああいう行為を招いてしまったのは咲の誤算だな。
普通はうらやましいと思うんだろうが・・・僕は褒め言葉を言わなくてよかったと思ってさ。」
「松永先輩は竹井さんみたいな女の子は嫌いなんですか?」
「嫌いっていうより苦手かな。
それに現実の話として・・・彼女ちっちゃいから、僕と並んだらほら・・・。
浅岡と並んでもこれだけ違うのにね。あははは
大魔神扱いされるのはごめんだからね。」
「松永先輩ったら・・・。私は大魔神扱いなんてしてませんよ。
気はやさしくて力持ち!なのはよく知っていますから。
あれ?中井先輩はなんか・・・怒ってます?」
「台風娘も苦手だし、だいたい竹井の妹ってのがキモい。
それに、じつは反論がある。
菅野がほめたから言いだせなかったんだけどな・・・。」
「反論って何ですか?」
「ノミネートされたやつは、相手を待つしかないわけだよな。
たとえば、俺がノミネートされたとしようや。
そして女子のノミネートされたのが浅岡だったとするだろ。
そしたら俺と浅岡はデートできないだろうが!」
「あっ・・・。」
「おおぉ・・・そうだ。」
「その反論した方がいいですよ。きっとあとで問題が起こりそうです。」
「で、中井は浅岡とデートしたいのかい?」
「へっ?」
「おい、そういうツッコミするな。」
わいわい話しながら、また後ろをさりげなく雪美は振り返ってみたが咲と真菜の姿がなくなっていた。
(どうしたのかな・・・もう駅なのに。)
駅で中井と分かれ、同じ電車に松永と乗る。