バーチャルウォーズ
夕飯時に結衣子から輝人はきつく注意され、輝人も松永が来たらいろいろと説明すると話をした。
そして、雪美が松永が来る頃かと玄関に出たとき・・・
「あれ、君は・・・スノウさんの・・・」
「えっ!流輝さん、どうして我が家に?」
「我が家・・・。そうか、スノウさんは浅岡さんのお嬢さんだったんですね。
いやぁ、ほんとに世間は狭いな。
あの、申し遅れました。僕は菅野弓、咲の兄です。
いつも弟がお世話になってありがとうございます。
じつは、弟はさっきまでうちの店にいたんだけど、彼女を家に送っていってそれでこちらで心配しているんじゃないかって言うので、ご挨拶も兼ねて僕が伝えに来ました。
これ、僕の作った新作のケーキなんですけど。」
「わぁ、新作できたんですね。あのすぐに母を呼びますから、どうぞ中に入ってください。」
「じゃ、少しだけ。ほんとならお父さんにご挨拶とお礼も言わないといけないのに、突然すみません。
お父さんにはうちの店のコーヒーチケットですがお渡しください。」
結衣子は弓を思い描いていたとおりのイケメンだとニコニコ顔で接していた。
雪美は弓が(流輝が)まさか、咲の兄だと思わなかったので思わず弓の顔をじっと見つめてしまった。
「やっぱり弟に似てますか?」
「ん~~~~なんで気がつかなかったんだろうって思って。」
「僕が早く本名でご挨拶していればよかったね。」
結衣子が雪美に知り合いなのかと尋ねるので、先日友人と寄った洋菓子店で偶然出会った話をした。
「ほんとに世間ってせまいわね。あら・・・。雪美のお客様がいらしたわ。」
弓は、それをきいてすぐに帰る支度をして玄関に出た。
そして、松永と入れ違いに去っていった。
「今の・・・咲のお兄さんじゃなかったかな。」
「松永先輩知っていたんですか?」
「前に会ったことがあるから。」
「松永先輩がご存じなのに私も母も今、知ったんです。
あの人がお兄さんだって。ああ~~~」
「クスクス、そういうことってあるよね。あれ、咲はまだ帰っていないの?」
「はい、遅くなるって母に電話があったそうなんですけど、お兄さんのお店にいて、誰かを送っていったからってお兄さんがわざわざうちまできてくださって。」
「めずらしいね。・・・で、井坂先生は?」
「お夕飯のときに帰ってきて、今はお風呂かな。」
「同居っていうより下宿っぽい感じだね。」
「でしょう。けっこうプライバシーをお互い尊重できるように話し合いで決めてるんですよ。」
「プライバシーを尊重するのはわかるけど・・・もし、君のご両親がお留守だったらどんな感じなんだろうね。」
「えっ!?べつに何も。部屋にいるか出かけるかですけど。」
「俺は君が心配だなぁ。」
「ええっ!!!」
「じつはうちは妹が3人いるんだ。
俺や両親がいるときはいいんだけど、留守のときに妹たちだけになるだろう?
そのときはちょくちょく電話をいれたりするけど、戸締りはきちんとやってるか火は出していないか・・・心配で心配で。」
「松永先輩ってお父さんみたいですね。あははは」
「そっかぁ・・・。部活でもおっさんクサイってよく言われてる。
だけど、実際に同じ部屋に男といれば女の力ではどうにもならないだろう?
何かあったときになくのは女の子だしね。
うちの母親はいつも言ってるよ。」
雪美には輝人とのことが思い出されてつくづくバカだったと反省した。