バーチャルウォーズ
咲と言い合いの末、雪美はおとりにならないと咲に嘘をついたのだった。


(たぶんウソだな。ああいう素直になった雪美は必ず実行だ。
しかし・・・弱ったな。
ある意味うれしい気もするが・・・もしものときが心配でたまらない。)



そして夏祭り前日がきて、校内の生徒たちはそれぞれ出し物の準備に追われていた。

とくに生徒会はそれまでに集計を終えた結果で、夕涼みデートのノミネート者を選び終わって決定した10名を表示し、デートをしたい希望者の申込書を集めていた。


「浅岡は誰を希望したんだ?
俺はてっきり浅岡も選ばれてる側かと思ったけど、女の子は案外ノミネートされないものだったんだな。」


副会長の中井が雪美にそう話しかけた。

雪美が選ばれる側でないのは、じつは咲と松永で消滅させてしまっていたからだったのだ。

竹井遼と松永もじつはノミネート側になっていたが、それもこっそりはずしてあった。


1年の竹井のファンの女子ががっかりしたあげくに生徒会に文句を言ってくる場面もあったが、竹井遼自身が女の子たちに直接お礼を言って、竹井の名前とデート希望と書いてくれれば・・・ともちかけただけで解決してしまった。



そして・・・前日は終わり・・・問題の夏祭り当日がやってくるのだった。



夏祭りにはクラス単位の出し物、クラブの出し物、家族の参加にいたるまでスムーズに進行されていた。


結局、雪美のおとり行動も、知っているのは咲、中井、松永、竹井遼。
そして、先生として了解した井坂輝人も雪美を守ることに専念することになった。


「そろそろペアの発表だな。しかし・・・浅岡には何もして来なかった。」


中井がそういうと、松永が

「まだ油断はできないよ。あらかじめエサは3日前には派手やかにバラまいてあるんだからな。」



「あ、そろそろ俺と先生は舞台に立たないといけない。
松永たちは雪美をガードするんだぞ。」


「わかった。しかし・・・竹井はノミネートしてないのに、希望者多数で舞台行きってすごいよな。」


「まぁ・・・あいつもファンが多いってことだ。
ゲイとは知らない乙女たちがな。

さて、咲がそろそろ自分でパートナーを呼ぶ頃だ。」


中井と松永と雪美が咲を舞台下から眺めていると・・・


「え~こういう自分で彼女ですってここで言うのははずかしいんですが・・・お楽しみってことで発表させていただきます。

僕も今ここで広げて初めて相手がわかるのでドキドキします。
では・・・僕といっしょに夕涼みをしていただけるレディは・・・。

・・・・・・・。」


「どうした?」



「えっと・・・1年の浅岡雪美さん。
浅岡さんはこちらへあがってきてください。」


「えっ!!!先輩そんな細工もしたんですか?」


「まさか・・・それは運だけだよ。
まあ、咲自身の隣なら安全でもあるから、行っておいでよ。」


「はいっ!そうですね。」
< 55 / 80 >

この作品をシェア

pagetop