バーチャルウォーズ
そして夏休みが来て、咲と雪美はときどきデートに出かける日ができた。
デートといってもいっしょに服や夕飯の買い物に出かけることが主だった。
咲が予備校に出かける時間と勉強する時間を優先したためだ。
しかし、雪美がストレスに陥らなかったのはネットゲームの中で咲の兄である弓が流輝として夜に遊んでくれたというのもあった。
咲はそれが面白くなかったが、兄の弓は店長の娘と結婚を前提に付き合っているときいていたので、ゲームの中でのみ遊んでいいと兄と雪美に言っていた。
そんな中・・・7月もあと2日で終わろうとした日。
(誰かにつけられてる・・・!ずっと駅から?その前から?ついてきてる。)
携帯電話で咲に電話をしたが、留守電になったままだった。
「咲、たすけて・・・」
それからダメ元で輝人にも電話をいれたときだった。
後ろから大柄の男が雪美に抱きついてきて、雪美は叫んだ。
「きゃああああーーー!いやぁーーー!あっちいけ!」
輝人が雪美の叫び声に驚いてすぐに電話に呼びかけたが、走っているのか荒い息づかいが聞こえてくるだけだった。
「雪美!雪美、どこにいるんだ?おい、雪美!」
そして次の瞬間、ガシャという機械の音とともに電話の音が聞こえなくなった。
「ウソだろ・・・雪美!くそぉーーー!すぐに警察を・・・」
輝人の通報と事故はすぐにつながった。
雪美は暴行目的で追ってきた男に掴みかけられたが、砂を顔にぶっかけてあわてて逃げる途中で交通事故にあってしまったことがわかった。
病院に運ばれた雪美は足首を骨折した以外は外傷は見当たらなかったが、頭を強く打って記憶が曖昧になっていた。
中学生まではおおざっぱながら、行事などからめると思い出して話せたのだが、高校にあがってからの記憶がどうしても出てこなかった。
「ゆ、雪美の記憶がなくなってる!俺のこと・・・わかってないのか。」
咲は予備校が終わって携帯電話を手にして留守電を聞いた途端、凍り付いてすぐに結衣子に電話をかけて病院に走っていったのだった。
病室で無表情と困惑した顔を交互に見せる雪美になんと声をかけていいのか戸惑うばかりだったが、しばらく考えてから、雪美の前に立ち、声をかけてみた。
「痛いかい?不安そうだね・・・。」
「誰なの?」
「僕は君のお世話係で、菅野咲といいます。
なんなりと御用をお申し付けください。」
「私はそんなに裕福だっけ?さっき、お母さんと会ったけれど、普通のお家だったと思ったけど・・・。」
「君は頭を打って中学生までの記憶しかないから、そのあとのお父さんのがんばりを知らないだけなんだよ。
今は大きな家に住んで、下宿人まで住まわせているお家のご令嬢なんだ。
家庭教師と召使いが住み込みでお世話になっているんだよ。
その召使いの方が僕だからね。」
「リハビリしなきゃいけないんだって。痛いし、怖いの・・・そばにいてくれる?」
「もちろん。」
デートといってもいっしょに服や夕飯の買い物に出かけることが主だった。
咲が予備校に出かける時間と勉強する時間を優先したためだ。
しかし、雪美がストレスに陥らなかったのはネットゲームの中で咲の兄である弓が流輝として夜に遊んでくれたというのもあった。
咲はそれが面白くなかったが、兄の弓は店長の娘と結婚を前提に付き合っているときいていたので、ゲームの中でのみ遊んでいいと兄と雪美に言っていた。
そんな中・・・7月もあと2日で終わろうとした日。
(誰かにつけられてる・・・!ずっと駅から?その前から?ついてきてる。)
携帯電話で咲に電話をしたが、留守電になったままだった。
「咲、たすけて・・・」
それからダメ元で輝人にも電話をいれたときだった。
後ろから大柄の男が雪美に抱きついてきて、雪美は叫んだ。
「きゃああああーーー!いやぁーーー!あっちいけ!」
輝人が雪美の叫び声に驚いてすぐに電話に呼びかけたが、走っているのか荒い息づかいが聞こえてくるだけだった。
「雪美!雪美、どこにいるんだ?おい、雪美!」
そして次の瞬間、ガシャという機械の音とともに電話の音が聞こえなくなった。
「ウソだろ・・・雪美!くそぉーーー!すぐに警察を・・・」
輝人の通報と事故はすぐにつながった。
雪美は暴行目的で追ってきた男に掴みかけられたが、砂を顔にぶっかけてあわてて逃げる途中で交通事故にあってしまったことがわかった。
病院に運ばれた雪美は足首を骨折した以外は外傷は見当たらなかったが、頭を強く打って記憶が曖昧になっていた。
中学生まではおおざっぱながら、行事などからめると思い出して話せたのだが、高校にあがってからの記憶がどうしても出てこなかった。
「ゆ、雪美の記憶がなくなってる!俺のこと・・・わかってないのか。」
咲は予備校が終わって携帯電話を手にして留守電を聞いた途端、凍り付いてすぐに結衣子に電話をかけて病院に走っていったのだった。
病室で無表情と困惑した顔を交互に見せる雪美になんと声をかけていいのか戸惑うばかりだったが、しばらく考えてから、雪美の前に立ち、声をかけてみた。
「痛いかい?不安そうだね・・・。」
「誰なの?」
「僕は君のお世話係で、菅野咲といいます。
なんなりと御用をお申し付けください。」
「私はそんなに裕福だっけ?さっき、お母さんと会ったけれど、普通のお家だったと思ったけど・・・。」
「君は頭を打って中学生までの記憶しかないから、そのあとのお父さんのがんばりを知らないだけなんだよ。
今は大きな家に住んで、下宿人まで住まわせているお家のご令嬢なんだ。
家庭教師と召使いが住み込みでお世話になっているんだよ。
その召使いの方が僕だからね。」
「リハビリしなきゃいけないんだって。痛いし、怖いの・・・そばにいてくれる?」
「もちろん。」