バーチャルウォーズ
そのまま咲からのメールを無視し続けることもできないと思った雪美は、今思うことをすべて正直に書いた。
それでたとえ咲がアメリカに定住して仕事をして結婚したとしても仕方ないんだと自分に言い聞かせながら言葉をしぼりだした。
「ずっとメール送ってなくてごめんなさい。
マークは父の会社に出向してきてた人で、夏休みのバイトのとき知り合ったんです。
彼はお母さんを捜すために日本に来ていたのですが、偶然にもマークの本当のお母さんと私がデパートでのトラブルをきっかけに出会ってしまって、それで母子の再会をさせてあげることができました。
1か月ほどマーク母子は我が家に住んでいて、それからは日本支社の近くで2人で住んでいます。
それから竹井先輩の会社の偉い人から連絡があったらしくて、マークはアメリカにある子会社を任されることになったらしくて、私にいっしょにアメリカにきて結婚してほしいと言ってきました。
まだ返事をきちんとしていないんですけど、今の私はアメリカでなんてやっていけないと思うし、私はこっちの大学を受験して日本で就職したいのでお断りするつもりです。
でも・・・・。
正直言って、このあいだの咲と女優さんとのスクープを見て不安だった気持ちがもっとさびしくなりました。
マークにも咲にももうかかわらないのがいちばん楽なんじゃないかって思ってしまいます。
ごめんなさい。ちょっと受験を前にして心と頭が変です。
気持ちが落ち着くまで、咲にはメールを送らないようにします。
毎日、イジワルなことばかり言って困らせてしまいそうなので、何も言わないことにします。
雪美。」
送信し終えてすぐに雪美はパソコンの電源を切り、受験勉強を始めた。
「受験勉強がはかどると思ったんだけどなぁ・・・。
なんか涙出てきちゃって文字が見えないよ。
私はきっとバカなのよね。そんなのわかってるってば・・・。なんて。」
それから時は過ぎ、雪美は隣の市に立地する女子大に合格した。
「おめでとう、雪美。」
「雪美ちゃん、おめでとう。」
マークとパティはアメリカへ引っ越しする直前に雪美の自宅へと挨拶にやってきた。
「合格おめでとう。僕はアメリカに留学してくれたらって思ったけど、誰だって夢に向かってやりたいことはあるんだもんな。
それに君の心に住んでいるヤツは、口惜しいけれど不動みたいだからね。
でも、あきらめたわけじゃないから。
リョウから情報をつかんで隙があれば、飛んでくるつもり。」
「もう、マークったら。
あっちでは部下をたくさん動かさないといけないんでしょう?
体に気を付けて・・・。」
「うん、雪美もね。いい未来を~」
マーク母子が去ってしまって雪美の両親は予想よりずっとさびしそうにしていた。
とくに父はマークの仕事ぶりや勤勉さをとてもかっていた。
マークが雪美に告白したことも薄々知っていたが、雪美には何もそのことについては言わなかった。
雪美はそれをありがたいとは思っていたが、咲のせいでマークを追い返したとは思われたくなかったので、母にこっそりと胸の内にあるものをこぼしていた。
「ママ、私ねマークにいっしょにアメリカで住もうって言われたの。
でも断っちゃった。」
「あら、それってやっぱり咲クンのことが気になるのかしら?」
「わからない。わからなくなってしまったの。
咲とはもうメールもやりとりしていなくて、昨日メールソフトを動かしたけれど咲からもメールは来ていなかったの。
なんか自然消滅しちゃったのかもしれないなって。」
「悲しいのね。」
「それもわからなくなっちゃって・・・。だってたとえばここに今、咲がもどってきたとしても何ていえばいいのか、どういう態度をすればいいのかわからなくて。
いつのまにか思い出の人になりつつあるのかも・・・。
こんな気持ちで目標もないアメリカへ行くなんて絶対にマークを不幸にしちゃうと思ったの。」
「でも雪美は大学を選んで合格したでしょ?
とりあえずでも自分の行きたい道を選んだってことでしょう?」
「うん、ちっぽけな目標だけどね。
色とか服飾とかの勉強をしてアットホームなブティックで働きたいなって。
結婚したらいったん仕事はやめて子ども服を手作りしたいなとも思ってる。
もうどこまで平凡なのかな~っていう目標だよね。」
「ううん、そんなことはないって。
私も若い頃は似たようなものだったわ。
絵本作家になりたかったのよ。
絵を描くのが大好きでね。
でも、お父さんと出会って結婚して・・・あとは小さなあなたを育てるのにお金がたりなくて、けっこう回り道っていうか趣味でさえ絵を描けなくなってしまった。
だけどそんなことはお父さんは知っていたからね、とってもがんばって会社を軌道にのせてくれたのよ。
その道のりにいっしょにいることができただけで、幸せだったわ。」
「うふふ~パパが聞いたらとっても喜ぶね。」
それでたとえ咲がアメリカに定住して仕事をして結婚したとしても仕方ないんだと自分に言い聞かせながら言葉をしぼりだした。
「ずっとメール送ってなくてごめんなさい。
マークは父の会社に出向してきてた人で、夏休みのバイトのとき知り合ったんです。
彼はお母さんを捜すために日本に来ていたのですが、偶然にもマークの本当のお母さんと私がデパートでのトラブルをきっかけに出会ってしまって、それで母子の再会をさせてあげることができました。
1か月ほどマーク母子は我が家に住んでいて、それからは日本支社の近くで2人で住んでいます。
それから竹井先輩の会社の偉い人から連絡があったらしくて、マークはアメリカにある子会社を任されることになったらしくて、私にいっしょにアメリカにきて結婚してほしいと言ってきました。
まだ返事をきちんとしていないんですけど、今の私はアメリカでなんてやっていけないと思うし、私はこっちの大学を受験して日本で就職したいのでお断りするつもりです。
でも・・・・。
正直言って、このあいだの咲と女優さんとのスクープを見て不安だった気持ちがもっとさびしくなりました。
マークにも咲にももうかかわらないのがいちばん楽なんじゃないかって思ってしまいます。
ごめんなさい。ちょっと受験を前にして心と頭が変です。
気持ちが落ち着くまで、咲にはメールを送らないようにします。
毎日、イジワルなことばかり言って困らせてしまいそうなので、何も言わないことにします。
雪美。」
送信し終えてすぐに雪美はパソコンの電源を切り、受験勉強を始めた。
「受験勉強がはかどると思ったんだけどなぁ・・・。
なんか涙出てきちゃって文字が見えないよ。
私はきっとバカなのよね。そんなのわかってるってば・・・。なんて。」
それから時は過ぎ、雪美は隣の市に立地する女子大に合格した。
「おめでとう、雪美。」
「雪美ちゃん、おめでとう。」
マークとパティはアメリカへ引っ越しする直前に雪美の自宅へと挨拶にやってきた。
「合格おめでとう。僕はアメリカに留学してくれたらって思ったけど、誰だって夢に向かってやりたいことはあるんだもんな。
それに君の心に住んでいるヤツは、口惜しいけれど不動みたいだからね。
でも、あきらめたわけじゃないから。
リョウから情報をつかんで隙があれば、飛んでくるつもり。」
「もう、マークったら。
あっちでは部下をたくさん動かさないといけないんでしょう?
体に気を付けて・・・。」
「うん、雪美もね。いい未来を~」
マーク母子が去ってしまって雪美の両親は予想よりずっとさびしそうにしていた。
とくに父はマークの仕事ぶりや勤勉さをとてもかっていた。
マークが雪美に告白したことも薄々知っていたが、雪美には何もそのことについては言わなかった。
雪美はそれをありがたいとは思っていたが、咲のせいでマークを追い返したとは思われたくなかったので、母にこっそりと胸の内にあるものをこぼしていた。
「ママ、私ねマークにいっしょにアメリカで住もうって言われたの。
でも断っちゃった。」
「あら、それってやっぱり咲クンのことが気になるのかしら?」
「わからない。わからなくなってしまったの。
咲とはもうメールもやりとりしていなくて、昨日メールソフトを動かしたけれど咲からもメールは来ていなかったの。
なんか自然消滅しちゃったのかもしれないなって。」
「悲しいのね。」
「それもわからなくなっちゃって・・・。だってたとえばここに今、咲がもどってきたとしても何ていえばいいのか、どういう態度をすればいいのかわからなくて。
いつのまにか思い出の人になりつつあるのかも・・・。
こんな気持ちで目標もないアメリカへ行くなんて絶対にマークを不幸にしちゃうと思ったの。」
「でも雪美は大学を選んで合格したでしょ?
とりあえずでも自分の行きたい道を選んだってことでしょう?」
「うん、ちっぽけな目標だけどね。
色とか服飾とかの勉強をしてアットホームなブティックで働きたいなって。
結婚したらいったん仕事はやめて子ども服を手作りしたいなとも思ってる。
もうどこまで平凡なのかな~っていう目標だよね。」
「ううん、そんなことはないって。
私も若い頃は似たようなものだったわ。
絵本作家になりたかったのよ。
絵を描くのが大好きでね。
でも、お父さんと出会って結婚して・・・あとは小さなあなたを育てるのにお金がたりなくて、けっこう回り道っていうか趣味でさえ絵を描けなくなってしまった。
だけどそんなことはお父さんは知っていたからね、とってもがんばって会社を軌道にのせてくれたのよ。
その道のりにいっしょにいることができただけで、幸せだったわ。」
「うふふ~パパが聞いたらとっても喜ぶね。」