優しい秘密
『おはようございます』


笑顔で挨拶するこのおじいさんは、このホテルでは親分と呼ばせている。


何でと聞けば『親分は親分だから親分』


父はおやっさんと呼ぶが血は繋がっていない。

このホテルの子供達は初めて来る日に、親分との二人だけの『秘密の儀式』を地下で行う。

僕と春は『特別』なのでやらなくていいのだそうだ。

僕は聞いた事があった。


部屋に入るとまずは『サカズキ』と『チギリ』をやるのだ。

これは、サイダーとお菓子のパターンと、チューペットバージョンらしい。

とにかく親分と食べ、最後に空き瓶、ゴミを持ち帰る。

という者もいればそうじゃないという証言もある。

そうじゃない方はこうだ。

『エンコ』と『ハモン』これが伝説なのか真実なのかは僕もまだ解らないが

泣いて出て来る子も入れば、何も言わずただ黙って出てくる子供もいる。

不良で突っ張っていてもワンワン泣いて出て来る人もいるぐらいだ。

僕達は『特別』でよかったと思っていた。

でも僕は少し気になっていた。

親分は儀式の最後にある秘密を話すらしい。

親分『夏っ!おはよう』

夏『親分!おはようございます!』


親分『今日は太陽君だったかな?呼んでこい夏!』

夏『はーい!』



夏『太陽!ギシキー』

夏『親分来たよ!ギシキするんだって!』

・・・・・・・

太陽『まーだーねーるーのー』

・・・・・・・

夏『ねぇーギーシーキー』


太陽『ネールー』

・・・・・・・

親分『いつまで寝てるんじゃー!起きんかこのボンクラがーっ!!!』


太陽はあまりの声に飛び起きると、そこには2メートル近い身長のじじいが立ち伏せていた。

そのあまりの出来事に太陽の眠気も吹き飛んでいた。

太陽は起きた。

そして太陽は起こされてしまった悔しさとじじいにビビった自分を奮い立たせて

見たが、完全に誰がどう見てもそこには

『親分』が立っていた。

太陽は勇気を出して言った

『なんだよ!誰ですか!眠いなぁ。』

親分はじっとみつめ一歩前に出る。

(ガタン。)台から降りる音

『小僧ついてこい』

出て行く親分を見て慌てて服を着替えた太陽は気付いた。

親分はチビなんだと。

『くそっなんだよ!ビビっちまったじゃねえか!』

そして、間もなくし、太陽が出てきた。



太陽は泣きながら親分に連れ出されていた。

僕は『特別』な事を改めて喜んだ。

次の朝、僕はお父さんとハルと太陽の3人は親分の命令で

『山野草採り』に出かける事にした。



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