星月の君




「どうしてすぐそうなる」

「だって、ぼんやり空を見ているじゃないか。だから恋わずらいかなと」




 確かに恋に悩むものは空を見るとはいうが……。

 万人にそれが当てはまると思うな、と私は溜息。別に恋などしていない。ただ、そう。遠出したときに見た、女を思い出しただけ。それだけならば恋などと呼ばない。


 それに……。
 私は恋をする気には、まだなれないだろう。



 女のもとへ通う男のほうが恋愛はしやすい。女はただ、待つだけ。

 そうして出会ったのが、山吹だった。彼女は美しい人だった。か弱くもあったが、情熱的な部分もある。文にあった歌は、本物だったはずなのに。


 彼女は、私から去ったのだ。私に愛を誓ったはずが、私を捨てるように。



 引きずっているなど……。




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