星月の君




 傷つくのが怖い。信じるのが怖い。馬鹿みたいなそれを、私は未だに引きずってしまっている。
 それはまるで、男が通って来なくなった女のようだ。



 私は愛していたのに。



 彼女が、私に愛を紡いだ唇でさよならを告げた。もう、終わりにしましょうと。
 なぜ、あんなに愛しているといったのに、私のもとを去って、他の男の妻となったのか。



 敦忠は「忘れてしまえ」という。

 確かにそうだ。
 忘れてしまうべきだ。


 あんな女、そう、忘れてしまえば良い。





 それで簡単に忘れられるなら、人はきっと、恋などはしないのだろう。


 まだあれこれと一人、話し続ける友人の言葉を耳にしながら、闇夜の空を私は見つめる。




  * * *




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