星月の君
「夢がないなあ君は。もしかしたら女房達が言うようにどこぞの貴公子かも知れないよ?面白いことに女顔だったとかいうのもあるから、もしかしたら本当に女かも知れないしって考えるとさあ……どきどきしない?」
「するか馬鹿」
この妄想男め。
呆れた私は、ふと黙ったままの顕季殿が気になり「顕季殿はどう思われますか?」と聞いてみた。
共通の友人を持つもの同士、宜しくと挨拶をした後なので、これからは話しかけようと思う―――――が、彼はなぜか少し考える混んでいる様子だった。
それに敦忠も気になったようで「何か知っている?」と聞く。が、彼は首をふった。
「いや……、何でもないよ」
では私は、と先に待賢門外へ向かっていく顕季殿を、私はややひっかかりを感じつつも見送った。別にたいしたことではないだろう。
敦忠も何も言わず、私に向かって「今日はね、恋人から文を貰ったんだよ」とにやつき始めたので、軽く無視して私も歩き始めた。
* * *