星月の君
――――藤原顕季邸。
少しは女性らしくして下さいませ。
そう言われて、溜息まじりに私はおとなしく部屋にいた。
重い黒髪と重ねた着物。ああ、面倒臭いったらない。そうもらしたら、私付きの女童が「若葉さまは、おきらいなのですか」と聞いてくる。
「嫌いではないよ」
「でも」
「小雪は、こんな私は変だと思う?」
「いいえ!わたしは、若葉さまのこと大好きです」
にっこりと笑って、そういってくれるのは可愛らしい少女である。
名前を小雪といって、私を慕ってくれる子なのだ。そして――――よき理解者でもあるといえる。
いわゆる、姫様と呼ばれるような立場である私であるが、別にそんなたいそうな肩書は似合わないことくらい、自分が一番理解していた。
幼いころから兄が大好きで、兄の真似ばかりして、まるで男の子のように活発だった私は、成人しても大して変わらなかった。