星月の君


 兄は大人になれば女性らしく、と思っていたらしい。だが残念!私はそんな、いかにも高飛車で、噂好きな女になどなりたくはない。

 そして、姫というような肩書や身分で寄ってくるような男にも、興味はない。



 今もそう。
 小雪が持ってきた文は、遠回しに「君の顔が見たいな」だなんていう誘いの文であった。

 ふざけんな、と思った私はすぐに破り捨てようとした。が、紙の裏が使えるので、小雪と落書きに使わせてもらった。
 どうせ兄が知ったら、無残に破り捨てられるだろうから。


 私は前にひどい目にあったのを忘れていないし、男なんて、と思う。


 女性は、男からの文を待つしかない。それは女である私も同じで、文をもらってやりとりをしたことはある。だが、いい思い出がないのだ。

 どいつもこいつも下心の塊というか何というか……そういう感じなのである。




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