星月の君



 もしこのまま、ありのままの私を好いてくれる人が現れなかったら、私はどうしようか。




「あ、もしかしたら帰ってきたかな」




 邸内で音。そしてわざととしか思えない、どたどたという足音。それは小走り故で、そしてその主が誰なのかもすぐにわかった。




「若葉!」

「お帰りなさい、兄上」

「ただいま―――じゃなくて、聞きたいことがあるんだが」

「まず、先に着替えてきたらどうです」




 参内したままの格好で私のもとへやってきたのは実の兄、藤原顕季である。
 一瞬着替えを考えた様子を見せたが、そのまま私の側へと腰を下ろす。



 お説教、決定のようだ。
 そして私にも心当たりがすごくある。





「お前、夜抜け出したな……?」

「えっと、その、気のせいでは」

「馬鹿者。お前だろ。直衣を着て、かつ橋の近くで笛を吹いたというやつは」




 ―――何故知っているんだ。




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