星月の君
「ずっと邸に閉じこもってばかりだったから……。でも、ごめんなさい」
良い、と返した兄は立ち上がる。そのまま去ろうとして、とまった。
「若葉」
「はい」
兄も私の身に何があったのかを知っている。だから、己の目の届く範囲に私を置いている。
小雪が私の手に、己の手を重ねた。私がいます、とでもいうように。
「どうか忘れるな。私はお前の味方であるし、お前が嫌がるようなことはさせないつもりだ」
着替えてくる。そう言い残して去った兄。
昔からこの兄は優しいのだ。だからつい、甘えてしまう。兄も兄だ。本当に、私がこまってしまうくらい、兄は守ってくれているのだ。
「若葉さま」
「大丈夫よ」
小雪の手を私はそっと握り、そう笑った。
* * *