星月の君



 私の幸せを願う兄のことを思えば、と私は女性らしい格好も少しずつするようになってきたという矢先。

 ああ、大好きな琵琶や笛も暫くは封印か。

 お前のせいではない、といった兄は「私とて残念だ」と苦笑する。





「お前の奏でる音色は私は大好きだからな。聞けなくなるのはやはり嫌だが……少したてば噂も静まるだろう」




 まるで幼子なやるように頭を撫でて「では静、頼んだぞ」「ええ、お任せ下さいませ」と部屋を出ていく背を私は見送った。

 小雪が「若葉さま」と着物を軽くつかみながら声をかけてくる。その目には強い光があった。



「わ、わたしも若葉さまをお守りします!」

「そうねえ。小雪、私と一緒に若葉さまをお守りしましょうね」




 意気込む小雪に、私は思わず笑ってしまった。

 静を筆頭にした女房たちもいる。頼もしいかぎりだ。
 どちらかと言えば私は自分より、可愛くらしい小雪のほうが変な男にさらわれないかと心配なのだが。



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