星月の君
それは、まだ髪上げもしていない、振り分け髪の少女だった。
吸い込まれそうな大きな目。紅色の唇。
自分よりも年下であろう。
私は、星に住む姫だ、と咄嗟に思った。
ちょうどその頃、月に住む姫の話が女たちの中では流行っていたから、なおさらだった。
幼かった私は、その幼き少女を星に住む姫だと思ったのだ。そう思うほど、魅入ったのだ。
だが、彼女はこちらに気がつくと、聞きなれない笛の音を止め、じっとこちらを見たかと思うと眉を下げ、一目散にに走り去ってしまったのである。
故に名前も、彼女が何処の誰の娘なのか、私にはわからなかった。
が、星月夜だったことから彼女を密かに「星姫」、「星月の君」と名を付けたのである――――――。