星月の君
どういう意味かと聞く前に、ずいっと敦忠が身を前に乗り出してくる。
「顕季が、北の方を迎えたっていう話だよ!」
迫ってきた敦忠に距離が近いと押しのけてやろうと思っていた思考が、とまった。
どこの顕季だ、と思ったのが読めたのか「僕の友人の藤原顕季だよ!」という言葉に二度目の停止。
……なんだって?
やや色好み気味な敦忠の友人にしては真面目で好ましく、最近はよく話すようになっている顕季殿が、北の方を迎えたと?
おかしいことではない。だが――――。
「あくまで、噂だろう?」
よくわかったね、という敦忠にもう言葉を発するのも面倒になりかけた私は「近い」と顔を押してやる。
まったく。どれだけ噂に惑わされれる気なのか。
もしかしたら、さっき会った基俊殿も知っていたかもしれない。私はあの色男を思い出す。どうせ今夜も何処かの女性のもとへいくのだろうが。
「そうなんだけどさあ。それがね、かなり美人だとか。しかもほら、星の出る日に琵琶や笛の美しい音色が聞けるっていう話もあっただろう?」
それはさっき基俊殿と話していたばかりだ。
私は頷く。