星月の君
「あれ、と思わないかい?顕季が北の方を迎えたという話しと、その楽器の話重なるんだよねえ。もしかしたら、今男性の気になる人であがっている"星姫"かもしれないっていうのも聞いてさ、これはと思ったんだよ」
「……、まさかお前」
敦忠も"星姫"なのか。
私が知っている、星姫―――星月の君と決まったわけじゃない。だが馬鹿だと思うくらい、自分以外がその名を呼ぶのが、気に入らない。
別に私のものでもなんでもないのに。
独占欲。
ああ、彼女は私のものでもなんでもない。
思考を追い払い、敦忠の考えそうなことを私はああと浮かべていた。ありえる。こいつなら。そんなことを思っている私に気づいたように「やだなあ」と笑う。
「いくら僕でも敦忠殿みたいに節操なしにはならないよ」
「どの口がいうんだ、お前」
「―――でね、行成」
聞け人の話を。
溜息をつく私をよそに、この馬鹿はとんでもないことを言い出す。
「ねえ、"噂"を確かめに行こうよ」
つまりそれは、そう。
藤原顕季は北の方を迎えたというのは事実か、ということである――――。
* * *