星月の君
――――また、会って下さいますか。
見た夢が悪かった。
ああ、これは夢だとすぐにわかった。それはそう、別れた女である山吹が出てきたからだ。彼女は微笑む。まだ恋人だったときの笑みのまま。だがそれはすぐに変わり、彼女の隣には顔のやからぬぼんやりとした男が立つ。
ああ、この男なのか。
この男に、私は負けたのか。
そうやって目覚めた私は、大きく息を吐いた。
もう終わったこと。それが夢にでるのはどうなのだろう。
彼女もまた、私のことをいくらかは気にかけているとでもいうのだろうか―――――いや、もういいのだ。いい。終わったことをめそめそするのは、敦忠だけでいい。
敦忠がいうには、私は恋愛に真面目すぎるのだという。
もっとこう、積極的に、という。積極的とは、なんだ。あちこちに文を出せとでもいうのか。そんなのは無理だ。あの色男でもあるまいに。
そう思えばよくもまあ、体がもっているなと思う。あちこちに女がいて、それに毎夜のようにあちこ通っているのだから。
疲れやしないのだろうか。
まあ、全員が恋人、らしいが。
しかし――そんなの恋人といえるのか。
男ならば経済力がある程度あれば、いくらでも恋人は作れるだろう。だがそれは本当に愛しているのだろうか、などと思ってしまう。
父は若いころ、恋人は何人かいたらしい。が、一人、本当に心から愛した女性が出来たとき、彼女らと別れ、女性を愛した。それが母だたった。
母と父は傍目から見てもなかむつまじいもので、どこかこう、自分もあんな風になれたら、と思っていたのだろう。それが今に至るまで続いている。