星月の君
「お館様、文が届いております」
「誰からだ」
「敦忠様からです」
休みの静けさを味わっているというのに……。
まだ、押し掛けてこないだけはましといえよう。
文を受け取り、ああ、また変なことをいい始めなければいいのだが、と私は思う。
―――今の君にぴったりじゃないか?
忍ぶれど
色に出でにけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで
(誰にも知られないように隠していたのに、私の恋心は顔に出てしまったようだ。恋に悩んでいるのかと問われるほどに)
僕のいいたいこと、わかるよね?
そんな声が聞こえてきそうな気がして、ああと顔を覆う。
――――そんなに出ていただろうか。
顕季邸でのあれから、何日か過ぎたが……。
実はいうと彼女、顕季殿の妹である若葉と文のやり取りをしているのだ。もちろんやましいことはない―――いや、やましいことってなんだ。自分でいっていて駄目だと思う。
ただ、そう、日常のことを書くだけ。「まだ噂を信じている者が文を送ってくるため、兄が怒っている」等とも聞いていたので、そんななか笛の音を聞きにいくだなんていうこともできず、なんというか、もどかしさで参ってしまっていた。
声が、聞きたい。
話したい。
出来れば、近くで――――。