星月の君




 彼女は、そう、己よりも位の高い男の妻となるといった。

 簡単にいえば寝取られた、とでもいうだろうか。



 告げられたこと、真実。
 信じていた私が馬鹿みたいじゃないか。

 あんなに「ずっと愛しているわ」と、「私だけのものでいて」と言っていたのに。



 最後の抵抗か。
 私は責めるように歌を贈った。




  今はとて
  わが身時雨にふりぬれば
  言の葉にさえ
  移ろひにけり

(「もうこれまでだ、別れよう」とあなたはおっしゃる。私もあなたにとっては古くなってしまい、時雨にあった木の葉のように、以前のあなたの約束の言葉も色変わりしてしまったのですね)




 歌を贈って以来、彼女とは会っていない。
 今は嫁いだ男にまた外で女が出来たとかなんとか、そんなうわさをちらりと聞いたが、知ったことではなかった。


 もう昔のことだ。
 そう、昔の。




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