星月の君
忘れようとしても、こうして時折思い出してしまうのは、まだまだ、ということなのか。いや、と私は苦笑する。
君は真面目過ぎるんだよねえ、という敦忠の色好み癖は見習いたくはない。やはり、一人の女性に誠実であるべきだ、と思うからだ。
それが、このざまだが。
お供をつれて遠出した私は、ぼんやりと思う。ああ、忘れてしまえたら楽になるのにな、と。
あの人の肌も、声もまだ思い出せてしまう自分が、女々しく思えた。
お供をつれて出てきたのはいいが、気まぐれ故に目的はない。ただ、ぼんやりとあちこちに視線をめぐらせるだけである。
友人の別邸が近くにあるので、お供をそこに残し、ひとり散策に出た。
ひとりに、なりたくなったのだ。
「うん?」
足を止める。