星月の君
「―――」
昔のことだというのに。
言っていることと垣間見していることと、まったく別ではないか。
だがそんなことよりも目に飛び込んできた、一人の女性に見入っていた。笛の音の正体は彼女らしい。
その女性の長い髪が肩から落ち、こちらを見ようとした。が、女童がちょうど来て姿が見えなくなってしまった。私自身も慌ててその場から離れた。
似ている、と思った。
あれから数年はたっているのだ。彼女だってもう成人しているだろう。もしかしたら誰かしらの妻となっているかもしれない。
まさかな、まさか……。
言い聞かせる私は、心が乱されていた。これはそう、いつ以来だろう。
別邸から少し離れて戻ろうとしたときだ。お供が「お館様、もう戻らねば」とやってきたのは。
――――。