ベストマリアージュ
「やめてください!」


思わずそう叫んでた。


一瞬怯んだように見えた男は、それでも懲りずに抱きついてくる。


いくら酔っぱらってるっていったって、たぶん家庭もあるんだろう男の行動は、もし自分の父親だったらと思うとゾッとした。


誰かのものである印は、男の薬指に虚しく光ってる。


もう妻や子供にも相手にされないんだろうか?


だからこんなところでこんな風に、酔った勢いでこんなことをするんだろうか?


嫌がっていた体の力を抜いて、男の目をジッと覗きこんだ。


その瞳の奥に寂しさとやるせなさを宿しているような気がして、私は男を自分と重ね合わせた。


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