ベストマリアージュ
この人は私かもしれない。


大切な人に相手にされない痛みは、身をもって知ってる。


急に男が可哀想になった。


私にジッと見つめられて、男は一瞬情けない顔をした。


きっと、哀れんでいるのがわかったのかもしれない。


さっきまで酒の力で絡んでたくせに、その目は明らかにもう酔ってなかった。


お父さんみたいな歳の男性の弱い部分に、私はほだされそうになる。


私で役に立つなら、こんなことで気が済むなら、好きにさせてあげようって、思った。


抵抗しなくなった私を、不思議そうに見下ろしながら、男は固まっていた。


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