ベストマリアージュ
しばらくそのまま時間が流れる。


次の駅でドアが開いた時、男はそそくさと降りていった。


ここが降りる駅だったのかどうかはわからない。


だけど彼は、降りていく時、小さな声で言ったのだ。


「悪かった……」


みんな何かを抱えていて、どこかで発散させないと、やってられないのかもしれない。


それが例え、間違った方法だったとしても……


あの人が、家族と仲良くなれる日が来るといい。


私は勝手な想像をしながら、あの人の幸せを願う。


涙はいつの間にか止まっていた。


あの人のおかげかもしれない……


そんなことを思う自分に呆れながら、それでもそんな風に思えた自分に少しだけ笑みがこぼれた。



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