ベストマリアージュ
「嘘ばっかり、顔、ひきつってるわよ?」


そう指摘されて慌てて手で口を押さえる。


「で、なに?もしかして……大地くんのこと?」


大地の名前に思わず反応しそうになって、慌てて答えた。


「違うよ、もう、なんでもないったら!」


鯖の味噌煮に箸を伸ばして口に運ぶ。


わざと母から顔を逸らして、食事を続けた。


「なら、いいけど……

なんかあったら言いなさいよ?」


心配してくれてるのはわかってる。


でも大地のことを母に話すわけにはいかない。


「わかった、ありがと」


口ではそう礼を言う。


ごめんね?お母さん……


心の中ではそう謝りながら……




「そういえば、お隣のさとしくん、家出るらしいわよ」


「えっ?」


「なんでも転勤みたい

美容師でも大きい店だとあるのねぇ?」



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