ベストマリアージュ
転勤?じゃあもう会えなくなるの?


なぜか胸がキュッと苦しくなる。


あいつに会えないことが、こんなにもショックだなんて、自分でも驚いた。


今までだって何ヵ月も会ってなかったけれど、隣に住んでいればいつかは会えると思ってた自分がいる。


その可能性を失えば、会う確率なんかゼロに等しい。


「……どこに?」


気がついたら、母にそう聞いていた。


「さあ?そこまでは聞いてないけど……

なあに?気になるの?

なら自分で聞けばいいじゃない」


ニヤニヤしながらそう言った母に、平静を装いながら、適当に相槌を打つ。


冷やかすつもりだったんだろう母が、あからさまにガッカリしたのを見て、私は小さく溜め息をついた。


母はこういう風に私をからかうのが好きで困る。


その時、携帯のバイブがテーブルの上で震えた。


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