ベストマリアージュ
自分に呆れながら、ふと壁にかかっている鏡を見た。


あれから太ってはいないけれど、あきらかに手入れしていない髪の毛と、メイクもしていないぼんやりした顔が映ってる。


あんなに、練習したのにな……


大地のためだけに、綺麗になりたかった。


それで、きれいだねって、やっぱり珠美のがいいって、言ってもらいたかっただけ。


だけど、いくら綺麗になっても、現実は変わらなかった。


大地は感じてはくれたけど、私の欲しかった言葉はくれなかった。


大地と寝てみてわかった。


気持ちのないセックスは虚しいだけだってことが……


一方通行の思いは、辛いだけだってことが……


本当はもうわかってる。


もう大地と元に戻ることはないんだってことを……


容姿とかじゃなく、心が彼女に動いたんだってことも……


そのとき――


ベッドの上で、携帯が震えた。


(まさか?また大地から?)


恐る恐るベッドに近づき、携帯を手に取る。


ディスプレイを開くと、やはりメールは大地からだった。


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