ベストマリアージュ



ピンポーン……


さとしの家のチャイムを押す。


あんなことがあって、3ヶ月――


さとしとは一度も顔を合わせていない。


緊張しながらも、やっぱり引っ越してしまう前に会っておきたくて、勇気を振り絞って今、私はここにいる。


普段着でボサボサな髪の毛だけど、メイクだけは教わった通りに頑張ってみた。


ピンポーン……


なかなか出てこないこの家の主は、もしかしたら留守なんだろうか?


諦めて帰ろうとした時、玄関のドアがガチャリと開く音がした。


「あら、珠美ちゃん?

久しぶりねぇ

綺麗になって!」


ニコニコと嬉しそうにそう言ったおばさんは、私の手をギュッと握り、ブンブン振り回す。


「あ、もしかしてさとし?

なら今買い物頼んだから、すぐ戻ると思うわ

中に入って待ってなさい」


遠慮する私の腕をグイグイ引っ張りながら、おばさんは私を中に入れようとする。


「あの……でも……出直します!」


ズルズル引きずられながら、私は必死に抵抗して見せた。


「なに言ってんの?

知らない仲じゃないんだし、たまにはおばさんにお茶くらい付き合って?」


おばさんの勢いに押されて、私はしぶしぶ家の中へと上がらせてもらった。


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