ベストマリアージュ
嬉しそうに笑うおばさんを見てたら、私まで嬉しくなってくる。


「はい、ぜひ」


よろしくお願いします、なんて頭を下げたとき、玄関が開く音がした。


ただいま、と聞きなれた声が響く。


さとし帰ってきたと思うと、途端に緊張が走った。


「おかえりぃ」


おばさんは無邪気にそう言って、玄関からそのまま自分の部屋へと上がろうとしていたさとしを、リビングに引っ張ってきた。


「ほら、さとし!

珠美ちゃん来てくれてるのよ?

チーズケーキ食べて待っててもらったの」


ニコニコしながらそう話すおばさんとは対照的に、さとしの顔は仏頂面だ。


チラリと私の顔を見ただけで、おばさんの方に話しかけてる。


「俺、忙しいんだよ

チーズケーキ食べてもらえて良かったじゃん

ゆっくりしていってもらったら?」


俺には用はないって、暗に言われてる気がした。


私が何も言えずにいると、代わりにおばさんが答えてくれる。


「なに言ってんの!

あんたに用があって来てくれたのよ?

ねぇ?珠美ちゃん」


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