ベストマリアージュ
「で?ほんとは何の用?」
おばさんに押しきられるようにして、仕方なく私を部屋に入れてくれたさとしは、ベッドに座りながら、ドアの近くに立ち尽くしている私にそう言った。
「え?」
「ほんとに髪切ってもらいに来たわけじゃないんだろ?」
ギ……とベッドのスプリングが軋む音がする。
最後にこの部屋に来たときのことを思い出して、ベッドから目を逸らした。
「切ってほしいとは思ってるけど……
ほんとはさとしに謝りたくて」
「なにを?」
「大地のこと……さとしの言った通りだったから……」
さとしは黙ったままだった。
そんな話、聞きたくもなかったのかもしれない。
でも、この家から出ていく前に、きちんとさとしに謝りたかった。
「私が一番になる可能性なんか、一ミリも残ってなかった……
ただ、体を重ねて、虚しくなっただけだった……
あの時、さとしがせっかく言ってくれたのに……バカだよね?私……」
「……」