ベストマリアージュ
「でも、だからこそ、やっと諦められたの

また会いたいってメールもらっても、まったく心は動かなかった……

奥さんを捨てて私とやり直したいって意味じゃないことくらい……バカな私でもわかったから……」


一気に言いたいことを吐き出して、私はさとしの返事を待った。


でもいつまで経っても、さとしは返事をしてくれない。


「ごめ……んね?

それから、ありが……とう」


涙が、一筋頬をつたう。


さとしに許してもらえないことが、こんなにも辛いなんて……


あの時、さとしが怒鳴ってくれたのも、全部私のためだった。


その手を離したのは私。


大地に抱かれて初めて気付いた。


さとしが、怒ってくれた意味を……


私が傷付かないように、心配してくれてたんだってことを……


止まらない涙を手の甲で拭いながら、それでも私は部屋を出ていくことが出来なかった。


ただ、立ち尽くして、嗚咽に変わる涙を止めようとするだけ。


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