ベストマリアージュ
キス……される?


恥ずかしくなってギュッと目を瞑る。


それなのに、なかなか唇は触れてこない。


不思議に思って、そっと目を開けてみると、さとしは私の髪に触れていた。


「きったねぇ、髪」


「は?」


「俺が切ってから、一回も切ってないだろ?」


「え?あ……うん」


拍子抜けして、聞かれるままに答えていると、さとしがニヤリと口の端を上げた。


「キスされると思ったんだろ?」


「ち、違っ!」


「俺の言うこと聞かなかった罰

まだしてやんねぇよ」


「――っ!」


クスクス肩を揺らしながら笑うさとしは、相変わらずSキャラ全開だ。


真っ赤になって、口をパクパクさせている私を面白そうに眺めながら、さとしは私の肩を掴んで回れ右をさせる。


それからすぐ側にあった椅子に私を座らせると、白いケープを首に巻く。


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