ベストマリアージュ
「お前、元旦那に会ったりしてねぇだろうな?」
「会うわけないでしょ?
もう連絡もしてないよ」
「ほんとかよ?俺がいなくて寂しいからって、ふらふらぁっと、誘われたら行っちゃうんじゃねぇの?」
「……」
「おい!否定しろよ!」
「だって、毎回言われたら、面倒臭い」
「あぁ?面倒臭いってなんだよ!
てめぇ、ふざけんな!」
さとしからの電話はいつもこう。
大地に会ってないかどうかの確認から始まる。
知らなかったけれど、どうやら意外とヤキモチ妬きみたいだ。
あれからすぐにさとしは転勤で横須賀の方に行ってしまった。
今は実家を出て、一人で寮に住んでるらしい。
らしいというのは、行ったことがないからだ。
引っ越しも、荷物が少ないから手伝わなくていいって言われたし、遊びに来いとも言われない。
だからさとしに会えるのは、たまの休みに実家に帰ってきたときの、ついで。
なんだか付き合ってるのかどうかも怪しいと思っていたけれど、毎日必ず同じ時間にくれる電話が、さとしの彼女なんだと実感させてくれた。