ベストマリアージュ
ただの浮気ならいいじゃない。


私なんか、浮気どころか本気になられて、離婚したのよ?


そう、喉まで出かかったけれど、直前で呑み込んだ。


もう関係ないのだから、波風は立たせたくない。


あとは彼女と大地の問題だ。


「じゃあ、そういうことだから

あなたももう二度と私に連絡してこないで」


そう言って、電話を切ろうとしたとき、彼女が低く呟いた。


「――復讐のつもり?」


復讐?


そんなこと考えたこともない。


大地に抱かれたあのときでさえ、私は復讐というよりも、ただ自分を見てほしかった。


納得したかったのだ。


綺麗になって、積極的なセックスをして、前とは違う自分でも彼女には勝てないのかどうか。


それは復讐とは違う。


確認だ。


私が捨てられたのが、あの子より容姿やセックスが劣っていたと思いたくなかっただけ。


「なんでそう思うの?」


「だって……私に大地を取られたから、その仕返しなんでしょ?」


「私から取ったって自覚、あるんだ?」


「――っ!」


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