ベストマリアージュ
幸せそうに微笑みながら、彼女は「はい」と答える。


それだけで、私が今日呼び出された理由が、わかったような気がした。


「おめでとう」


私は心からそう言った。


これであの大地も、少しは落ち着くんじゃないかと思ったからだ。


私と大地の間には、子供は授からなかった。


それはそれで意味があるように思える。


だって5年も一緒に暮らしてたのに、赤ちゃんは私のところじゃなく、まだ結婚したばかりのこの子にやってきたんだから。


「……それ、本気で言ってます?」


彼女は私の言葉を本心とは受け取らなかったらしい。


こないだの電話でも、私がまだ大地に未練があるようなニュアンスで話してたことを思い出す。


「うん、本当にそう思ってるよ?

良かったじゃない

これで大地を縛り付けとくこと出来るんだし」


我ながら大人気ない。


ちゃんと祝福してるつもりだったのに、この子の顔を見てると、つい意地悪を言ってしまう。


あの頃、大地に裏切られたことを思い出すからなのか、彼女の意図に腹が立つからなのか……


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