ベストマリアージュ
「謝りたいって、言ってなかったっけ?」


なんだかバカらしくて、呆れたようにそう言った。


「そ、そうです……けど」


ばつの悪い顔で、彼女は言葉を濁す。


「妊娠してるって見せたかったんでしょう?」


もう意地悪な気持ちより、可笑しさの方が込み上げてきた。


笑いながらそう言ったことに気分を害したのか、彼女は不満そうに口を尖らす。


「だったらもういいじゃない

妊娠してるってことはわかったし、大地にももう会わないって言ってるんだから

帰ってもいい?

どうせ謝るつもりなんかないんでしょ?」


言いたいことだけ言って立ち上がろうとしたとき、ちょうどコーヒーが運ばれてきた。


気まずい雰囲気に、あげかけた腰をもう一度下ろす。


店員が奥に引っ込んでから、また立ち上がろうとしたとき、彼女が不機嫌そうに口を開いた


「頼んだものくらい飲んでいったらどうですか?

それに、まだ話は終わってません」


確かにコーヒーに罪はないけれど、彼女の言うなりになるのも面白くない。


「お金は払いますから、どうぞ飲んでください

それに私にはもう話すことないですから」


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