ベストマリアージュ



携帯から聞こえる呼び出し音。


話し合いは、うまくいったと思う。


彼女に会ってみて、はっきりわかった。


私はもう、大地に未練は一つも残ってないってことを……


だからすぐにさとしの声が聞きたかった。


早く出て……さとし…


歩きながら、辛抱強く、彼が出てくれるのを待つ。


……トゥルルルル……トゥルルルル……カチャ……


「さとし?」


「珠美?」


さとしの声。彼が呼ぶ私の名前に胸がキュンとなる。


「今から……帰るね?」


昨日、会えないことをあんなに怒っていたんだから、当然喜んでくれるって思ってた。


でも……


「あ?あ……あぁ、うん」


なぜか、煮え切らない彼の態度。


心、ここにあらずといった感じだ。


昨日の勢いとは全く違う彼の態度に、なんとなく違和感を覚える。


「さとし?今、家じゃないの?」


少しとげのある言い方をした私に、さとしは途端に不機嫌になる。


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