ベストマリアージュ
「なんだよ、その言い方!俺がどこにいようが、俺の勝手だろ?

それにお前が今日は会えないって言ったんじゃねぇか

お前こそどこにいんだよ?仕事じゃなかったのかよ?」


確かに嘘ついた私が悪いけど、そんな風に言わなくたって……


しかも私の質問には答えないくせに、何よ、その言い草!


「そんなの、どっちだっていいでしょ?

とにかく、もうすぐ帰るから……

あ、でもさとしも出掛けてるならいいや

気にしないで?

早く終わったから会えるかなと思って電話してみただけだから」


わざと少し突き放した言い方をして、さとしの返事を聞く前に電話を切った。


せっかく、会いたいと思ったのに……


売り言葉に買い言葉で、いつもけんかになっちゃう。


はぁ……と大きく溜め息をついて、携帯を鞄にしまうと、少し早足で駅へと向かった。


駅のホームで電車を待っていると、見慣れた顔が、私の前を横切った。


――えっ?今の……まさか……


その人が歩いていった方向を振り返ると、そこにはやっぱり……


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