ベストマリアージュ
怒鳴ったかと思えば、寂しそうな顔をしたり……


強引に引き寄せられたかと思えば、優しく抱き締めてくる。


そんなさとしに、どう対応したらいいのか、正直よくわからなかった。


ただ、心配してたんだってことは、さっきの言葉でわかったけれど……


「……さとし?」


いくらなんでも、ここは駅のホームで、いつまでも抱き合ってるわけにもいかない。


でも振りほどくわけにもいかず、様子を窺うようにそう呼んでみた。


「……んだよ」


拗ねたような、ふてくされたような、そんな言い方に、少しだけ恥じらいが混じっているような気がして、思わずクスッと笑ってしまう。


「好きだよ……さとし」


ゆるく抱き締められたまま、さとしの耳元でそう言ってみた。


なんとなく彼が不安そうだったから……


なのに彼はいきなり私の体を離して、驚いたようにこっちを見てる。


しかもその顔は真っ赤だ。


「さとし?」


私がそう呼ぶと、さとしはハッとしたように顔を逸らした。


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