ベストマリアージュ
ゴクリと唾を呑み込んで、覚悟を決める。


人差し指をインターホンに近づけて押そうとしたその時――


ガチャっといきなりドアが開いた。


「ひゃっ!」


思わず仰け反ると、中から出てきたのは、さとしじゃなくて……


「あら?さとしに用?」


綺麗な女の人だった。


当たってほしくなんかなかったのに、嫌な勘てなんで当たっちゃうんだろう?


さとしだけは大地とは違うって思ってたのに……


「あなた、大丈夫?

顔が真っ青だけど……」


心配そうに覗き込んでくる彼女は、やっぱりすごく綺麗でいい匂いがした。


髪も茶色くてフワフワで、スタイルもいい。


私、完璧に負けてるじゃん。


「あの、すみません……間違えました」


ペコリとお辞儀をして、なんとかそれだけを口にすると、私は急いでその場を後にした。


「え?あ!ちょっと!」


彼女の声を無視して、足早に歩いていく。


カツカツと響くヒールの音が、妙に耳についた。

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