ベストマリアージュ
こんな仕打ちを受けてもなお、嫌われたくなかったのだ。


だから泣きも喚きもせず、淡々と離婚の準備を始めた私に、彼はありがとうなんて無神経な言葉を吐けたのかもしれない。


離婚が決まり、引っ越すまでの数ヶ月間。


私はもしかしたら、大地が考え直してくれるかもしれないと、前よりももっと妻らしくいようとした。


しつこくも面倒くさくもない、他に女がいるから離婚して欲しいと言われてもなお、彼を愛している私を、失いたくないと思い直してくれるんじゃないかと……


だけど、そんな奇跡は起こらなかった。


彼はただ、私に感謝するだけ……


結婚した時に一緒に選んだ家具も家電も、どんどん売りに出してなくなっていく。


そのたびに彼の愛情も少しずつなくなっていくような気がして、身を切られるような思いだった。

< 17 / 307 >

この作品をシェア

pagetop