ベストマリアージュ



「どうぞ?上がれば?」


玄関先で動けないでいると、優也がそう言って中に入っていった。


いいのかな?入っちゃっても。


一応、男の人の部屋だし、やっぱり遠慮した方が……


「なにやってんのぉ!

早く上がってきなよ!」


高めの声がそう叫ぶのを聞いて、私は反射的に靴を脱いだ。


恐る恐る上がって、さとしの部屋とは間取りが逆のリビングに顔を出す。


優也はベッドにゴロンと横になっていた。


「あ……の」


「そこ、適当に座れば?」


指差したのは、まあるいラグの上。


私は言われた通りにそこにポスンと腰かけた。


テレビもソファーもないワンルーム。


広い部屋に私が座ってるラグとキングサイズのベッド。


それに大きな鏡と椅子だけが置かれていた。


あんまり生活感がなさすぎて、さとしと同じ部屋とは思えない。


キョロキョロと見回していると、ちょうどベッドに寝転がってた優也と目が合った。


「……」


「なんだよ?」


「いえ……なんで」


「なんで部屋に入れたかって?」


「は……ぃ」


< 175 / 307 >

この作品をシェア

pagetop