ベストマリアージュ
大地のときにさとしを利用したように、今度はさとしのことでこの人を利用しようとしてる。


だけど止まらなかった。


いつの間にか足はリビングに引き返していて、私はまたさっきのラグの上に座っていた。


「で?なんでけんかしたの?」


「けんか……とかじゃ……」


「ふぅん、じゃあなんで泣いてたの?」


そう聞かれて私はバカみたいに話し出す。


「私……バツイチで……

浮気されて離婚されて……

そんなとき側にいてくれたのがさとしで……」


私、なんでこの人にこんなことまで話してるんだろう?


初めて会ったこの人に、こんな話したって仕方ないのに……


「そうなんだ」


「だから、もしかしたら……さとしは同情で私と付き合ってくれたんじゃないかって……」


自分の膝に乗せた拳をギュッと握りしめながら、自分の言った言葉に傷付いた。


同情かもしれない。


そう思ったのはついさっきのこと。


私に触れないさとしを見て、思ったんだ。


ただの幼馴染みには湧かない感情。


可哀想だから、見てられなくて側にいてくれただけなのかもしれないって。


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